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ごあいさつ
平成20年、岩出療育園(昭和43年発足)、桃山療護園(昭和51年)が新築合併し、「和歌山つくし医療・福祉センター」としてスタート致しました。私は新築合併をお手伝いするため、10年間勤務していた有田市立病院を退職し、平成17年桃山療護園に赴任致しました。それまでは小児科医として臨床遺伝学を専門分野として、40年余り従事してきました。障害医療との関わりはこの遺伝医療を通じて始まりました。この間、障害を理由に様々な社会的資源から門戸を閉ざされて怒りと悲しみを訴える当事者を前に、社会的支援を必要とする当事者が子供を背負ってお願いに廻るのは何か間違っていると思っておりました。 私の障害者医療への関わりはこの程度でしたが、「小児科医として最後の10年間は障害医療関係の仕事に就きたい」と思うようになりました。丁度そのころ新築合併のお話しを聴き、障害者支援サービスの側に立てるとこの世界に飛び込みました。新築のための会議は各種専門職、担当業者など多数の職種の方々が意見を交わすのを新鮮な気持ちで眺める楽しい作業でした。 完成した当初は、狭い環境から一時に広い環境へ解放され、利用者、職員共々喜びと同時に、ためらいを感じたことを懐かしく思い出します。立派な建物からセンターの果たすべき社会的責任、この建物に命を吹き込むのはあなた方スタッフの番だと語りかけられているようで身の引き締まる思いでした。 当面の課題は深刻な看護師、医師不足。全ての計画がこの課題の前で立ち往生致しました。しかし職員の皆様方の必死の努力により、関係者の皆様方の御理解を得ることが出来るようになり、有為の人材が手を挙げて下さるようになり、お陰様で現在ほぼ充足されるに至りました。 合併後、6年目を迎えた現在、すっかり手狭となってしまい、拡充計画が新たな課題となって登場しております。 特に、入所ベッド136床は常に満床、12床のショートステイベッドを流用せざるを得ない状態に至っております。これからの重症心身障害医療は在宅支援が重要となりますが、これでは在宅支援に必須のショートステイが機能麻痺状態に陥り新規、緊急ニーズには応えられない異常事態となっております。 打開策として、今後10年を見据えた拡充計画が進行中です。 このような状態に至った原因は、 1 児童期に入所したが、その後の受け皿が準備されていなかったため、成人、老人に至っても同じ施設に過ごさざるを得なかった。
2 ”児者一貫”小児期に発症した障害は、終生にわたって継続しており、年齢で区切ることは出来ない特殊な事情がある。
その結果、児童施設として発足しながら現在入居者の平均年齢が46歳となり、慢性的満床状態となっております。 医療・福祉行政的には、国の税収40兆円の大部分を医療・福祉等に充当している現状がいつまでも続くとは思えない。一方国家レベルでは、人権の立場から「施設解体論」が大局を占めている。「障害の有無にかかわらず人は皆家庭で、地域で幸せに生活する権利を有している。施設のような場所に閉じ込めて生活させるのは人権侵害である」との主張です。その通りだと思います。一方、子どもの高齢化と共に保護者の高齢化、保護者が病に倒れるなど、諸々の事情により家庭で障害者を支えることが出来なくなる現実は避けられません。家庭の役割をだれが担う?これまでと同じ施設?グループホーム?新たな形態?いずれにせよ地域理解、協力無くしてこの理念は生きてきません。 このような状況の中で私たちがなすべき事は、私たちの施設が「人権侵害」と言われないような施設に脱皮すると同時に、新しい理念を具現化する機構を模索したいと思っております。 制度上、医学的に重症度が区分されていますが、障害者がいて健常者がいるのではなく、人はみんな、時には手助けする役割であったりお手伝いを受ける立場となったりしますが、お互い助け合って生きていける社会となればと願っております。センターがその礎としてお役に立てれば幸いです。 医学的区分から障害の重症度が決められていますが、医学的視点だけで重症度は判定されるべきではありません。重い軽いに関わらず障害のことで先ず相談に訪れていただける施設を目指したいと思います。 民間法人で出来る事は限られております。地域の皆様方のご理解、ご支援、御指導を切にお願い申し上げます。